星の数
その人は 色んな顔を持っていた
朝は早く起きて 閉店前のパチンコ屋で掃除をして
みんなが動き始める頃 スーパーで買い物をして
朝と昼のくっついた食事をとる
お昼過ぎると 車でモップの配達をする
夕方になると 庭の手入れをして
日が暮れると 一足早くバーへ繰り出す
夜になると店を出て
独り 遠い空を見上げる
今夜は何個の星が目にとまり 輝いているのか
帳面に書き留める
今夜は晴れていて 雲一つないから
星の数は ざっと 15個ぐらい
けれども 彼が数える星の数は 何一つなかった
星はたくさん輝いているのに
帳面に書き留める星の数は 何もなかった
ある雨の夜は 星が一つも見えないのに
帳面には 20個にものぼる星の数があったのに
今夜は何一つない
今夜は 何もない
彼が数えた星の数は
彼が数えた幸せの数だった
11時になると 彼は家に帰りベットに潜る
そして
明日の星の数を数えながら
深い眠りに入るのであった