星の数
その人は 色んな顔を持っていた
朝は早く起きて 閉店前のパチンコ屋で掃除をして
みんなが動き始める頃 スーパーで買い物をして
朝と昼のくっついた食事をとる
お昼過ぎると 車でモップの配達をする
夕方になると 庭の手入れをして
日が暮れると 一足早くバーへ繰り出す
夜になると店を出て
独り 遠い空を見上げる
今夜は何個の星が目にとまり 輝いているのか
帳面に書き留める
今夜は晴れていて 雲一つないから
星の数は ざっと 15個ぐらい
けれども 彼が数える星の数は 何一つなかった
星はたくさん輝いているのに
帳面に書き留める星の数は 何もなかった
ある雨の夜は 星が一つも見えないのに
帳面には 20個にものぼる星の数があったのに
今夜は何一つない
今夜は 何もない
彼が数えた星の数は
彼が数えた幸せの数だった
11時になると 彼は家に帰りベットに潜る
そして
明日の星の数を数えながら
深い眠りに入るのであった
設定完了
時々 体の中を空っぽにする
少しずつ 体の外へ出す
脳みそや内蔵や そこに絡み合う血管
そして魂を
全部 汚い世の中へ流す
そして 何も感じない体を宙へ投げ出す
私の体は軽くなり くるくると宙を回る
グーン地面にぶつかる程 急降下したと思うと
今度は 空をも突き抜けるほど 急上昇した
そして 高く高く舞い上がり
地球の上に天など存在しない事を知る
そうして ひとしきり遊んだら
私の体に全てが戻り
リセット ボタン ガ セット サレル
「ピー ピー ピー」
セッテイヲ カンリョウ シマシタ
君に会いに行く
恋に落ちたら 頭の中がその人の事でいっぱいになる
食事中でも 運転中でも トイレの中でも
恋に落ちたら 頭の中がその人の事でいっぱいになる
何をしても 何も出来なくなる
だから 電話をかける
少しでも頭の中のいっぱいを 吐き出す為に
電話をかけると なんでだろう
話したくても 話す事なんてなくなる
だから 会いに行く
話す事なんて何もないから
今 君に会いに行く
都心感情線
高く細い空を見上げた
パッチワークされた 空と太陽を眺めた
狭く細い地面を見下げ
パッチワークされた 歩道と車道を眺めた
その細い先に空しさを感じ
私は長細い空と地に
寂しさを添えて叫んだ
ビルとビルの間を 突風が一瞬にして通り抜ける
人々のコートの先が当たり前のようにめくれ上がる
ビルとビルの間を 叫びが一瞬にして通り抜ける
人々がコートの先を当たり前のように押さえつける