ある男は
田舎に生まれ
田舎に育ち
田舎に暮らし
田舎に飽きて
窮屈になった
寂しくなると
悲しくなると
不安になると
海へ行き
ただ 海と空の切れ目を
眺めていた
どこか 知らない国へ行きたい
そこには 何かがあるのだろう
何があるのか見てみたい
どこか 知らない町へ行きたい
そこには 何もないのだろう
何もなくても それでいい
それが男の夢になった
夢は叶わなくても
持っているだけでもいい と気づいたとき
男は既に歳をとっていた
そして
寂しくなると
悲しくなると
不安になると
海へ行き
ただ 海と空の切れ目を
眺めていた
どこか知らない国で
自分と同じ様な気持ちで
ただ 海と空の切れ目を
眺めている 誰かが きっといるのだろう
そのとき男は
海の向こう側へ 初めて繋がった様に思った